- 2026年1月12日
一日一食vsバランス食:糖尿病専門医が教える“エビデンスで選ぶ”食事療法

こんにちは。豊中市で糖尿病診療に力を入れている城医院です。
院長は糖尿病専門医指導医として25年の経験と、年間4,000名以上の治療実績があります。
また、産業医・労働衛生コンサルタントとして15年の経験があり、10社以上と契約し、延べ1,000件以上の産業医面談(メンタル相談含む)を行なっています。城医院の公式サイトはこちらです。
https://jo-iin.com/
今日は「一日一食」「ファスティングダイエット」などの流行に振り回されない、“科学的に証明された食事療法”についてのお話です。
※この記事へのご質問や「ここが知りたい」というリクエストがあれば、ぜひコメント欄に書いてください。次回以降のテーマ選びの参考にさせていただきます。
⸻
1. インフルエンサーの成功体験=科学ではない
SNSを見ると、
「一日一食にしたら人生が変わった」
「ファスティングで−10kg、健康診断もオールA」
といった投稿が目につきます。
その人“個人”には本当に合っているのかもしれません。
しかし医学・栄養学の世界では、**ひとりの成功体験は「たまたま」**と扱います。
科学として認められるためには、例えばこんな条件が必要です。
• たくさんの人を対象にする
• 比較グループ(普通の食事をした人など)と比べる
• 結果をきちんと統計的に解析する
• 別の研究でも同じような結果が再現される
こうした過程を経て初めて「この食事パターンは、多くの人にとって有益そうだ」と言えるわけです。
ですので、
「○○さんには良かった」=「あなたにも良い」ではない
ここをまず押さえておきましょう。
⸻
2. 科学的に言う「食事療法」とは?
日本には厚生労働省と農水省が作った「食事バランスガイド(コマのイラスト)」があります。健康な人がどんなものをどれくらい食べると良いかを、主食・主菜・副菜・牛乳・果物で示したものです。これは日本人の栄養所要量のデータに基づいて作られています。(1)(2) 
また糖尿病など持病がある方に対しては、米国糖尿病学会(ADA)などが多くの研究をまとめ、エビデンスにもとづいた「栄養療法のコンセンサスレポート」を出しています。(3) 
これらは以下のような特徴があります。
• 特定の食品を極端にゼロにしない
• 長期的な健康アウトカム(心筋梗塞・脳卒中・死亡率など)で評価している
• 糖尿病や心臓病など、病気ごとのデータも考慮している
そして驚くことに、世界中のガイドラインをざっくり要約すると、結論はかなり似通っています。
「バランスよく、満遍なく、ほどほどに」
まさに今回のテーマそのものです。
⸻
3. 科学的に効果が確認されている代表的な食事パターン
3-1. 地中海食:心臓病予防のエビデンスがもっとも厚い
オリーブオイル・ナッツ・魚・野菜・果物・全粒穀物を中心にした**地中海食(Mediterranean diet)**は、
• 心筋梗塞や脳卒中などの心血管イベントを減らしたランダム化比較試験(PREDIMED試験)(4) 
• 高齢者での死亡率・心血管イベントのリスクを下げたメタ解析(5) 
など、「食事パターン」としては最もエビデンスが厚いモデルの一つです。
特徴を日本風に訳すと、
• 主食は白パンより全粒粉や雑穀が多め
• 牛や豚の脂身たっぷり肉より魚・豆・オリーブオイル
• 砂糖たっぷりの菓子より果物やナッツ
といったイメージです。
3-2. 日本型の「主食+主菜+副菜」を整える
一方、日本では「食事バランスガイド」や「食育ガイド」で
• 主食(ごはん・パン・麺)
• 主菜(肉・魚・卵・大豆)
• 副菜(野菜・きのこ・海藻)
を毎食そろえることが推奨されています。(1)(2) 
和食はもともと
• 野菜や魚が多く
• 動物脂肪が比較的少ない
という利点があり、これを「現代版にうまくアップデート」すれば、エビデンス的にも悪くない食事パターンです。
3-3. 糖尿病に対する栄養療法:共通する“コアメッセージ”
ADAの2019年コンセンサスレポートでは、糖尿病患者さんに対して
• 地中海食
• 低炭水化物食
• DASH食(高血圧に推奨される食事)
など、いくつかの食事パターンが有効とされています。(3) 
しかし、どのパターンにも共通している大事なポイントは、
• 野菜をたっぷり(特に葉物・非でんぷん質の野菜)
• 精製された炭水化物(白パン・白米・砂糖)は控えめ
• 甘い飲み物(ジュース・加糖飲料)は極力減らす
• 加工肉や揚げ物・お菓子は「たまに」にする
というところです。
食事療法は「この1品さえ食べればOK」という世界ではなく、
「全体のバランス」を長期的に整えることがコアです。
途中ですが…ご自身の今の食事パターン、「ここは自信がある」「ここは怪しいかも」というポイントがあれば、コメントに書いてみてください。振り返りのきっかけになります。
⸻
4. 一日一食・ファスティングダイエットの科学的な位置付け
4-1. 断食(インターミッテント・ファスティング)のエビデンス
「16時間断食」「5:2ダイエット」などの**インターミッテント・ファスティング(Intermittent Fasting, IF)**については、近年ランダム化比較試験やメタ解析が増えています。
最新のレビューでは、
• 体重減少
• LDLコレステロールや血圧の改善
などに一定の効果があるものの、**カロリー制限を普通にした場合と「同程度」**で、
「ファスティングだけが飛び抜けて優れている」とは言えない、という結論が多いです。(6)(7)(8) 
また、長期(数年以上)にわたる安全性や、
糖尿病・心臓病・腎臓病などのある人への影響は、まだ十分なデータがありません。
4-2. 一日一食(OMAD)はどうか?
一日一食(One Meal A Day, OMAD)は、インターミッテント・ファスティングの中でもかなり極端な方法です。
• 短期的には体重や体脂肪の減少が見られたという小規模研究もありますが(9) 
• 一方で、1日1回しか食べない人は、死亡率や心血管疾患死亡のリスクが高かったとする観察研究も報告されています。(10) 
さらに、
• 空腹感・疲労・集中力低下
• 過食・ドカ食い
• 摂食障害的な行動の悪化
などのリスクも指摘されており、医療者の多くは**「長期的に続ける方法としては推奨できない」**という立場です。
特に
• 糖尿病で薬やインスリンを使っている方
• 心臓病・腎臓病のある方
• 高齢者や妊婦
では、低血糖や体調悪化のリスクがあるため、自己判断での一日一食はおすすめしません。
4-3. 「合う人がいる」のは事実。でも…
もちろん、
• 若くて基礎疾患がなく
• 仕事も運動もそのリズムで問題なく回せていて
• 医師・管理栄養士も納得している
という条件がそろえば、慎重に使えるケースもあるでしょう。
ただしそれは、「一部の人に合うオプションのひとつ」であって、「誰にでも勧められる標準療法」ではない。
ここを混同してしまうと危険です。
⸻
5. 「バランスよく・満遍なく」を科学的に言い換えると?
5-1. 「バランスよく」とは?
科学的には、ざっくり次の3つを意味します。
1. エネルギーバランス
• 摂取カロリーと消費カロリーが長期的に見て釣り合っていること
2. 栄養素のバランス
• 炭水化物・たんぱく質・脂質
• ビタミン・ミネラル・食物繊維
が、必要量を大きく外れないこと
3. 生活全体とのバランス
• 睡眠不足・運動不足・ストレス過多が続くと、どんなに良い食事でも効果が目減りする
5-2. 「満遍なく」とは?
こちらは**「多様性」**のことです。
つまり、
• いろんな種類の野菜・果物
• 魚・肉・卵・大豆製品
• 乳製品
• 穀物(できれば時々は全粒や雑穀も)
を、特定の食材に偏らずに食べることです。(1)(2) 
最近の研究では、超加工食品(スナック菓子・インスタント食品・甘味飲料など)を減らし、家庭で料理した“ほぼ素材に近い食品”を中心にすると、同じカロリーでも体重が落ちやすいという結果も出ています。(11) 
5-3. 今日からできる「バランス&満遍なく」の実践ポイント
難しいことは置いておいて、現実的なレベルに落とすと…
• 毎食、「主食+主菜+副菜」をそろえる
• ごはん+魚か肉か大豆+野菜のおかず
• 野菜は1日350gを目標に、「色の違う野菜」を意識して選ぶ
• 甘い飲み物(ジュース・加糖コーヒー・スポーツドリンク)は“例外扱い”にする
• おやつ・スイーツは「ゼロでなくていいが、頻度と量を決める」
• 外食やコンビニでも、サラダ・おひたし・豆腐・味噌汁などを一品足す習慣をつける
これだけでも、かなり「エビデンス寄り」の食事になります。
ここまで読んで、「これなら自分にもできそう」「これはちょっとハードル高い」など、感じたことをコメントで教えていただけるとうれしいです。読みながら考えたことをアウトプットすると、行動に移しやすくなります。
⸻
6. インフルエンサーの情報とどう付き合うか
最後に、SNS時代ならではのポイントをまとめます。
1. 「この人には合った」ことと「自分に合う」ことを、一度頭の中で切り離す
2. 情報を見たら、
• 公的ガイドラインや信頼できる医療サイトで**「似た内容が推奨されているか」**を確認する
• できれば主治医や専門医に一度相談する(特に持病がある方)
3. 試すとしても、
• いきなり極端な方法(いきなり一日一食など)は避ける
• 短期間・小さく試し、体調や検査値をチェックする
エビデンスに基づく食事療法は、
「劇的で派手な変化」よりも
**「地味でマイルドなことを、長く続ける」**世界です。
⸻
まとめ
• インフルエンサーの成功体験は、その人には本当に合っているかもしれないが、科学的には「たまたま」かもしれない
• 科学的な食事療法は、多くの人を対象にした研究やガイドラインで裏付けされており、結論は世界的にかなり共通している
• 「バランスよく・満遍なく」食べることが、実は一番エビデンスに近い
• インターミッテント・ファスティングは「選択肢の一つ」だが、普通のカロリー制限と同程度の効果であり、誰にでも安全とは限らない
• 一日一食(OMAD)は、長期的な安全性や死亡率の面からも慎重であるべき方法
みなさんは、
「一日一食」「ファスティング」「糖質制限」など、どんな食事法が気になっていますか?
また、今のご自身の食事スタイルで「ここを変えたい」と思っていることがあれば、ぜひコメントで教えてください。
この記事を読んで「自分の食事を少し見直してみよう」と思われた方は、ぜひ感想や質問をコメント欄に書いてみてください。アウトプットすることで、行動につながりやすくなります。
良かったらフォローとスキをお願いします。
産業医、労働衛生コンサルタントの依頼はこちらまで、
https://jo-iin.com/industrial.html
参考文献・参照元一覧
(1) Yoshiike N, et al. The Japanese Food Guide Spinning Top. Ministry of Health, Labour and Welfare / Ministry of Agriculture, Forestry and Fisheries. 
(2) Ministry of Agriculture, Forestry and Fisheries. A Guide to Shokuiku. 
(3) Evert AB, et al. Nutrition therapy for adults with diabetes or prediabetes: a consensus report. Diabetes Care. 2019;42(5):731-754. 
(4) Estruch R, et al. Primary prevention of cardiovascular disease with a Mediterranean diet. N Engl J Med. 2013;368:1279-1290. 
(5) Furbatto M, et al. Mediterranean Diet in Older Adults: Cardiovascular and Mortality Outcomes. Nutrients. 2024;16(22):3947. 
(6) Semnani-Azad Z, et al. Intermittent fasting strategies and their effects on body weight and cardiometabolic risk factors. BMJ. 2025;389:e082007. 
(7) Wang B, et al. The impact of intermittent fasting on body composition and cardiometabolic health: a systematic review and meta-analysis. Nutrition Journal. 2025. 
(8) Eliopoulos AG, et al. A perspective on intermittent fasting and cardiovascular health. Frontiers in Nutrition. 2025. 
(9) Meessen ECE, et al. Differential Effects of One Meal per Day in the Evening on Metabolic Health and Physical Performance. Nutrients. 2022. 
(10) Healthline. One Meal a Day Diet: Benefits, Risks, and More. 引用されている2022年の観察研究より。 
(11) EatingWell / Nature Medicine study: Minimally processed home-cooked foods vs ultra-processed foods and weight loss outcomes.

監修
城医院 院長 城聡一
医学博士、糖尿病専門医指導医、産業医、労働衛生コンサルタント
院長は糖尿病専門医として25年の経験と、年間4,000名以上の治療実績があります。
また、産業医・労働衛生コンサルタントとして15年の経験があり、10社以上と契約し、延べ1,000件以上の産業医面談(メンタル相談含む)を行なっています。
