• 2026年1月12日

糖尿病の運動療法、『食べすぎたから運動でチャラ』はNGです

こんにちは。豊中市で糖尿病診療に力を入れている城医院です。
院長は糖尿病専門医指導医として25年の経験と、年間4,000名以上の治療実績があります。
また、産業医・労働衛生コンサルタントとして15年の経験があり、10社以上と契約し、延べ1,000件以上の産業医面談(メンタル相談含む)を行なっています。城医院の公式サイトはこちらです。
https://jo-iin.com/

今日は、**糖尿病管理における「運動療法の基本的な考え方」**についての話題です。

糖尿病や生活習慣、仕事と健康の両立についての情報を継続的に読みたい方は、よかったらフォローして次回以降の記事もチェックしてみてください。

1. なぜ運動療法が糖尿病に効くのか

糖尿病のタイプにかかわらず、運動はほぼ「万能薬」に近い支え役です。

運動をすると筋肉がたくさんブドウ糖を使うので、
• 血糖値が下がりやすくなる
• インスリンが効きやすくなる(インスリン抵抗性が改善)
• 体重、血圧、脂質(コレステロール・中性脂肪)も良くなりやすい
• 動脈硬化(心筋梗塞・脳梗塞)のリスクが下がる

といった効果が期待できます。(1)(3)  

世界的にも、**「糖尿病管理には食事・薬だけでなく運動が必須」**というのが共通認識になっています。(1)(4)  

2. 「食べすぎたから運動してチャラ」は危ない発想

ここが今日の一番のポイントです。

「今日ちょっと食べすぎたけど、あとでいっぱい歩いたから帳消し!」

この考え方は、糖尿病管理としてはNGです。理由は3つあります。

① カロリー計算が合わない

例えば、
• ケーキ1個(300kcal〜)を食べる
• それを完全に消費しようと思うと
• 早歩きなら約60〜70分以上必要になることも

現実問題として、食べ過ぎを運動だけで完全に打ち消すのはほぼ無理です。

② 血糖の「急上昇」はすでに起きている

食べ過ぎたあとで運動をしても、
その前に一度ガツンと血糖が上がってしまっていることが多いです。

血糖の急上昇と急降下は、
• 血管へのダメージ
• 動脈硬化の進行
につながると考えられています。運動は確かに助けになりますが、「急上昇そのもの」を無かったことにはできません。(4)  

③ 「食べ過ぎOK」の免罪符になりやすい

「運動すればチャラ」というルールを自分に許してしまうと、
• つい毎回食べ過ぎてしまう
• 運動できなかった日はただの「食べ過ぎ損」
になり、結果として血糖コントロールが悪化しやすくなります。

運動はあくまで「プラスの要素」であって、食べ過ぎの言い訳にはしない、
この線引きがとても大事です。

3. 食事療法と運動療法は「車輪の両輪」

糖尿病治療の基本は
① 食事療法(メイン)
 ② 運動療法(メイン)
 ③ 薬物療法(サポート)
の3本柱です。

このうち、**食事療法と運動療法は「車輪の両輪」**です。
• 食事療法
• 「入ってくる糖・カロリー」をコントロールする
• 運動療法
• 「体の中での使い方・消費」と「インスリンの効き」を良くする

どちらか一方だけではどうしても限界があり、
両方がそろって初めて、血糖と合併症リスクがしっかり下がることがガイドラインでも示されています。(5)  

「食事か運動か」ではなく、「食事も運動も」。
どちらも独立して大事で、どちらもサボれない、というイメージを持ってもらえると良いと思います。

4. どれくらい運動したらいいの?(目安)

世界保健機関(WHO)やアメリカ糖尿病学会(ADA)は、
**「1週間に150〜300分の中等度の有酸素運動」**をすすめています。(1)(2)(6)  

ざっくり言うと、
• 早歩きなど「息は弾むが会話はできる」くらいの運動を
• 1日30分 × 週5日(合計150分)以上
が目標です。

さらに、
• 週2〜3回の筋トレ(スクワット、かかと上げなど)を組み合わせると
• 筋肉量アップ
• インスリンの効きアップ
が期待できます。(7)  

もちろん、持病(心臓病・腎臓病・重い神経障害・増殖網膜症など)がある方は、主治医・糖尿病専門医と相談したうえで運動内容を決めることが大切です。

会社や健診の場面で「運動習慣がなかなか定着しない」というご相談もよく受けます。企業としての運動施策の組み立てについて知りたい人事・産業保健スタッフの方は、城医院の産業医・労働衛生コンサルタントとしてのサポートも活用いただけます。

5. キーワードは「いつでも・どこでも・1人でも」

運動というと
• スポーツジム
• ランニング
• ヨガ教室

をイメージしがちですが、糖尿病管理で大事なのは**「続けられること」**です。

そこでおすすめしているのが、
「いつでも・どこでも・1人でも」できる運動です。

① いつでも
• 食後10〜15分のゆっくり散歩
• エレベーターではなく階段を使う
• 電車・バスを1駅手前で降りて歩く

「時間を作って運動する」より、
日常生活の中に小さな運動をちりばめる方が続きやすいです。

② どこでも

職場や自宅でできる軽い運動としては、例えば
• 椅子からの**立ち座り(椅子スクワット)**をゆっくり10回
• キッチンやコピー機の前でのかかと上げ
• 歯みがき中の片脚立ち(ふらつく場合は無理しない)

道具がいらない運動は、思い立ったときにすぐできるのが強みです。

③ 1人でも

誰かと一緒だと楽しいですが、
• 相手の予定
• 天気
• 場所

などに左右されてしまいます。

**「1人で完結できる運動メニューを1つ持っておく」**と、
忙しい日でも最低限の運動を確保しやすくなります。

「今日はジムに行けなかったから0点」ではなく、「家で椅子スクワットを10回やったから今日は30点」くらいの発想で、自分を褒めながら続けていくのがコツです。

6. 食事と運動、それぞれ独立して意識する

まとめると、次のような考え方をおすすめしています。
1. 食事療法は「入ってくる糖をコントロールする」軸
2. 運動療法は「使い方とインスリンの効きを良くする」軸
3. 「食べすぎたから運動すればOK」ではなく、
• 食事は食事として見直す
• 運動は運動としてコツコツ積み上げる

この2つを独立してしっかり意識することで、結果的に血糖コントロールも合併症予防も安定しやすくなります。(3)(5)  

糖尿病は「努力が目に見えにくい病気」です。だからこそ、食事と運動の両輪をまわして、将来の自分への投資だと思って少しずつ続けていきましょう。

7. 安全に運動するためのチェックポイント

最後に、運動前にチェックしてほしいポイントも挙げておきます。
• 運動前後の低血糖・高血糖に注意
• インスリンやSU薬を使っている方は、主治医と運動時の血糖目標を相談
• **足のトラブル(傷・タコ・しびれ)**がある場合は、靴選びを慎重に
• 胸の痛み、強い息切れ、めまいが出たらすぐ中止
• 目の病気(増殖網膜症など)がある場合、激しいいきみを伴う運動は避ける

心配な点がある方は、ぜひ診察時に主治医・糖尿病専門医に相談してください。

職場の健康診断やストレスチェックの結果を踏まえて、「どれくらいの運動なら社員に勧めてよいか?」と迷う企業担当者の方も、産業医・労働衛生コンサルタントとしてお手伝いできますので、公式サイトからお気軽にお問い合わせください。

まとめとご質問

今日は、糖尿病管理における運動療法の基本的な考え方として、
• 運動療法は食事療法と「交換できない」
• 「食べすぎたから運動してチャラ」はNG
• 食事と運動は車輪の両輪で、どちらも独立して大事
• 目標は週150分以上の中等度の運動(ただし主治医と要相談)
• 「いつでも・どこでも・1人でも」できる運動を持つと続きやすい

というポイントをお話ししました。

みなさんは、
「これなら自分でも続けられそうだな」と思う運動はありますか?
よかったら、コメント欄で
• 普段やっている運動
• これから始めたい運動
などを教えていただけると嬉しいです。

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参考文献・参照文献

(1) Colberg SR, et al. Physical Activity/Exercise and Diabetes: A Position Statement of the American Diabetes Association. Diabetes Care. 2016.  

(2) Bull FC, et al. World Health Organization 2020 guidelines on physical activity and sedentary behaviour. Br J Sports Med. 2020.  

(3) Japan Diabetes Society, Research Committee on Diabetes and Exercise. Research Committee on Diabetes and Exercise(日本糖尿病学会 公式サイト).  

(4) Araki E, et al. Japanese Clinical Practice Guideline for Diabetes 2019. Diabetology International. 2020.  

(5) Tajima N, et al. Evidence-based practice guideline for the treatment of diabetes in Japan. Diabetol Int. 2015. (運動療法は食事療法と併用したときにより効果的であると記載)  

(6) Tonga E, et al. Physical activity guidelines for adults with type 2 Diabetes. Diabetes Res Clin Pract. 2025.  

(7) Borhade MB, et al. Diabetes and Exercise. StatPearls. 2022.  

城医院 院長 城聡一

監修

城医院 院長 城聡一
医学博士、糖尿病専門医指導医、産業医、労働衛生コンサルタント

院長は糖尿病専門医として25年の経験と、年間4,000名以上の治療実績があります。
また、産業医・労働衛生コンサルタントとして15年の経験があり、10社以上と契約し、延べ1,000件以上の産業医面談(メンタル相談含む)を行なっています。

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